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中古住宅の売却と解体

tochikatuyo19

海外と比較して著しく低い日本の中古住宅流通

住宅について、近年はリフォームからより踏み込み、内装を物理的に新しくするだけでなく、新たな付加価値を加えた「リノベーション」は耳馴染みが多い人も多いでしょう。

日本の新築住宅着工戸数は2018年度で約95万戸であり、近年は微増していますが、100万戸を切る水準で推移しています。

出典:2019年9月「建築着工統計調査報告」 

一方、中古住宅に関しては、平成25年の住宅・土地統計調査によれば全体の約13.5%程度です。住宅供給の推計はやや減少傾向でありながら中古住宅流通は増加傾向にあります。
これは近年の地価の上昇に伴い、新築住宅の価格が高騰したことが主たる要因ですが、一方で中古住宅に対する見方も変わり、より立地条件や広さを求めるニーズや、イチから自分の住まいを作りたいというニーズを反映して需要が高まってきたといえます。

しかし、諸外国に目を転じると、流通される住宅のうち中古住宅の占める割合はアメリカでは90.3%、イギリスでは85.8%、フランスでは64.0%と、中古住宅のほうが圧倒的に多く、日本の事情と大きく異なっています。

(出典:平成25年6月 国土交通省「中古住宅流通促進・活用に関する研究会」)

その理由として、外国は住宅が石づくりで日本は木造づくりが中心のため、日本のほうが建物のスクラップアンドビルドのサイクルが早く、新築の供給が多いという見方があります。
しかし、日本の神社仏閣など、メンテナンス次第で木造でも何百年も維持されているものがあるため、構造の違いが主たる要因とは考えにくいです。
もうひとつの理由として、日本ではいまだに新築神話が根強いことが挙げられます。中古住宅に負のイメージがあり、新築へのニーズが高いのです。
おそらく海外の人は、建物の新旧という客観的な指標よりも、自分にとって価値があるかという主観的な指標で住宅を選ぶ人が多い傾向にあり、その結果中古であっても気にしない選択をするほうが多いのではと推定されます。
さらに日本の社会的背景として、新築住宅に対する税制上の優遇が手厚いというのも原因として考えられます。

中古住宅の価格はどのように決まるのか?

不動産の価格は、原価性や収益性、費用性の観点から価値判断され、不動産の種類によってどの価値が重視されるかで価格が決まります。 具体的には、投資向けの賃貸マンションやアパートなどは収益性により価格が決まり、判断基準として何%の利回りがあるかが売買での重要な指標です。
しかし中古住宅に関しては、なかには戸建賃貸を投資目的に購入をする人もいますが、多くは自分で住むことを目的とした売買であるため相場でその価値が判断されます。いわば市場性で価値が決まります。

市場性の良し悪しは以下のような要因で決定されます。

  1. 適正な規模
  2. 戸建住宅として利用するのであれば、土地や建物の規模が大きすぎても小さすぎても市場性は劣ります。建物として3LDKの間取りで80㎡~120㎡が標準的な床面積と考えれば、その建物が建てられる土地面積がなければいけません。
    近年では100㎡以下の比較的小さな土地に木造3階建てを建築して、分譲されているケースをよく見ますが、1階あたりの面積は広いほうが当然利用効率はいい点に注意すべきでしょう。

  3. 良好な立地条件
  4. 駅に近いことはもちろんのこと、学校などの文教施設やスーパーなどの商業施設のアクセスが求められます。

  5. リスクが少ないこと
  6. 防犯上のリスクもありますが、特に最近は地震や台風などの自然災害が頻発しているので、地盤が弱い、海や川から近いといった土地は避けられる傾向にあります。
    また、いくらリノベーションが普及していても、そのリノベーションを行う箱である建物そのものに構造上リスクがある場合には、やはり市場性は劣ります。

これら以外にも細かい項目はありますが、見落としてはいけないものに「タイミング」があります。
同じ土地と建物であっても、時間の経過でその価値は変わり、さらには転勤などの住宅需要が増えるシーズンによっても価値は変わるものということを忘れてはいけません。

少しでも手取り額が多くなるテクニックとは?

中古住宅の価値が変わる要因を理解し、ベストなタイミングで不動産を売却する場合も、不動産は取引にあたってさまざまな人の手を介在するので、発生する手数料を削減しなければ、売買における手取り額を増やすことはできません。

まずは自分で登記事務を行うことで登記手数料を減らすことができます。
また、不動産仲介会社にも注目しましょう。選ぶべき中古住宅を、業者が所有し販売するものならば、建物の消費税を買主が負担する必要があります。しかし、不動産業者に仲介をしてもらい、個人間で売買する場合には消費税の負担がありません。
仲介そのものを利用しない売買の場合には、宅建業者に支払う仲介手数料そのものがいらないことになります。

このような手続き上のコストの削減に加え、地方自治体の補助金や税制上の優遇を活用し、小さなお得を積みあげることで大きな違いが生まれます。

日本ではまだまだ流通量が少ない中古住宅ですが、リノベーションの広がりにより、その捉え方も大きく変わってきたように思えます。
しかし、リノベーションとして価値を生み出せるのは、建物そのものがしっかりしていることが前提ですから、場合によっては取り壊すなどの選択肢をしたほうが、結果として高い市場価格で売却できることもります。
そのためには適正な土地や建物の価格情報に加え、取り壊しに要する費用や期間を把握することが大切なので、中古住宅の売却にはこれらの情報取集に努めるようにしてください。

田井能久

田井能久

不動産コンサルタント 不動産鑑定士として25年のキャリアを持つ。訴訟や調停、並びに相続等の税務申告のため の鑑定評価書の作成が得意。 最近はマレーシアを中心としたビザの取得と海外移住のサポ ートを通して、トータルな資産コンサルティングも展開している。

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