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空き家を医療・介護系施設として活用する場合のメリットとデメリットを解説

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高齢化が進む住宅地域での土地活用

kaigoshisetsu1 高齢化が進むなかで、老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)など、高齢者向けの住居や医療・介護系施設のニーズは増えています。しかし、老人ホームやサ高住などの大規模介護施設は、既成の住宅地内ではその土地を確保することが容易ではなく、在宅で介護を望む利用者も多いため、そのような利用者に向けた地域密着型の小規模多機能施設やグループホームの需要は大きくなっています。 つまり、小規模多機能施設やグループホームなどは比較的小規模なので、個人住宅などの解体後の比較的小さな土地を利用できる可能性は大きくなっていると言えます。

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医療施設についても同じような状況があります。大規模な地域の中核病院の整備が進むなか、小さな病院の経営は厳しくなり閉院する病院も少なくありません。このような事態を受け、病診連携はますます進むと考えられます。そこで、近年ではさまざまな診療科目のクリニックを1つのビルに集合させた、いわゆる医療モールが増加してきました。 特に地価の高い都市部では若いドクターが開業するには、このような施設は、開業資金が抑えられるので大変好まれています。 クリニックの診療圏((クリニックに通う患者さんの住む範囲のこと)は思っているより狭いため、さまざまな地域にこのような施設の潜在的なニーズは多い可能性があります。

近年では定期借地権も一般化し、ドクターが定期借地権を利用することで、地価の高い都市部でも個人で開業するケースも診療科目によってはまだまだ多い状況です。そのため、住宅程度の広さの土地を求めるドクターは潜在的にいます。さらにこのような場合は、いわゆる門前薬局のニーズも引き続き大きいため、その土地利用にも大きな需要があります。つまり、ひとつのクリニックが開設すると薬局もひとつ開設されることが多いため、比較的大きな土地であれば、医院と薬局双方に、土地を貸せることになるのです。 このように、医療・介護系施設向け土地活用は、今後成長が期待されています。

医療・介護系施設のメリット

kaigoshisetsu3 医療・介護系施設用に土地を貸すことには以下のとおり、大きなメリットが3つあります。

1つ目は、長期間収入の安定が見込めることです。 一般的に事業用の定期借地契約は10年ですが、医療・介護系施設の場合は開業にかかる建設投資金額が大きいことと、そもそも長期間地域に根ざした事業計画であるため、土地に関しては長期の借上げを希望します。よって、土地を更地にして貸す側にも長期の定期借地契約は長期間の安定的な収入につながる可能性が高くなります。

2つ目は、医療・介護系施設は飲食系施設などと異なり、建物の汚れや傷みのリスクが少なく維持管理が楽な点です。さらに深夜営業の商業施設やワンルームマンションなどに多い施設利用者と近隣住民とのトラブルも比較的少ないことも、貸主としては大きなメリットのひとつです。

3つ目は、精神的なメリットです。高齢化時代では、地域に深く根付くクリニックや小さな介護施設の土地活用は地域社会のとっても大きな意義があります。自分の生まれ育った土地であるなど、特に縁のある土地であればなおさら、自分の土地に地域や社会に貢献する施設ができることは、地主にとっても大きな達成感と満足感につながるでしょう。

医療・介護系施設のデメリットやリスク

kaigoshisetsu4 もちろんメリットだけではなく、デメリットやリスクがあることを知ることも大切です。 まず、介護系施設は制度がまだ安定していないことから、介護利用者の募集やヘルパーさんなど従業員の確保にもまだまだ不安定な点があります。これはテナント側の資金力や信用度によってオーナー側にもリスクがあるため、賃貸借の条件交渉などは専門家に相談することが重要です。また、当然なことですが、施設設計や資金計画なども非常に大切です。これらも含め建築士や会計士などコンサルタントのできる専門家に依頼することをおすすめします。

また、クリニックなど医療施設に関しては、適正な診療科目を決めるために、その地域にその診療科目が「不足しているのか」「飽和状態なのか」を知るための診療圏調査が必要です。さらに、診療科目によって必要な建物の規模やその土地の広さも大きく違ってくるので、医療施設計画に精通した建築士のコンサルタントが事業の成否を左右します。また、個人医院の場合には長期契約の場合であっても、医師個人の事情(経営・健康状態など)によって契約が打ち切られる恐れもありますので、ますます専門家の見立ては重要です。

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医療・介護系施設は、将来競争が激しくなった場合、撤退してしまうとほかの事業への転用には建築基準法の用途変更の手続きが必要であり、時間も費用も必要になります。退去後の対策も検討、想定しておくことが重要になるため、例えば定期借地権の種類も、建物譲渡特約付きとするか、単に事業用にするかなど、不動産業者や税理士などの専門家のアドバイスも重要になります。

市川均

市川均

建築家。一級建築士 1961年埼玉県志木市に生まれる。早稲田大学では佐藤滋教授の下まちづくりを学び、1987年大学院修了後は建築家納賀雄嗣氏に師事し内外の建築を学ぶ。現在は、埼玉県ふじみ野市にてアーキネットデザイン合同会社の代表として住宅と医院を中心とした建築設計を行なう傍ら、早稲田大学都市・地域研究所客員研究員として都市計画の研究と実践に携わる。現在NPOちちぶまちづくり工房代表理事、日本建築学会関東支部都市計画専門研究委員等を務める。著書には「図説城下町都市」鹿島出版会分筆担当、「地域協働の科学」成文堂分筆担当などがある。 アーキネットデザイン合同会社代表 http://www.doctor-life.jp

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